院生必読
「生活習慣病とはどんな病気か?」


平成12年度修了生・人間科学 泉 嗣彦

著者紹介:
東京、新宿区にある総合病院の健康管理センターで人間ドックの業務に従事しています。 年々、検査成績が増悪している方がかなりあり、いわゆる生活指導をしてもほとんど効果がみられません。よくないライフスタイルを改善させるための方法論を学ぶために、人間科学専攻で勉強させていただきました。みなさんにウォーキングをすすめていますが、習慣化までは道のりが遠いです。今回、生活習慣病について解説させていただきます。

生活習慣病とは

 生活習慣病という医学上の病名はありません。それは食習慣、運動習慣、休養、喫煙、飲酒などの生活習慣が、その発症・進行に関与する症候群と定義されています。すなわち、食べ過ぎ、飲み過ぎ、運動不足、ストレス、タバコの吸い過ぎなどの年余にわたる積み重ねが原因で病気が発生しますが、反面これらの原因が改善されるとそれに伴いその病気は徐々に治っていきます。つまり、生活習慣を修正しないと、クスリだけでは治せないのが特徴です(私は「医師の治せない不治の病」と呼んでいます)。

 生活習慣病に属する疾患には、肥満、糖尿病、高脂血症、高尿酸血症、高血圧症、循環器病、肺気腫、歯周病、脂肪肝、肺がん、大腸がんなどがあります。いずれもよく耳にする疾患です。これらの疾患で病院に行き、治療を受けておられる方は限りなく多いです。でも、ほとんどの方はその原因の多くが自分の不適切な生活習慣によるものとは気付いておられません。

 

なぜ、生活習慣病が問題か

 現在、日本人の死亡の原因の第1位はがんで、心臓病、脳卒中と続いて、この3つで約6割を占めています。これらの多くは先に述べた生活習慣がその発症・増悪に深く関わっています。生活習慣病が進展すると動脈硬化が進み、ついには心臓病、脳卒中などの重篤な疾患が発生します。その他に、問題なのはこれらの疾患は一つ発生すると、順々に他の疾患を合併してくることで、肥満、高血圧症、高脂血症、糖尿病の4つを合併している状態は「死の四重奏」とよばれて、心臓病、脳卒中の危険な予備群です。これまでは、これらの病気は早期に発見して治療すれば、心臓病、脳卒中は防げると思われていました。しかし、早期診断、早期治療を主体にした2次予防を行っても、その予防効果はあまりありませんでした。

 これからは、生活習慣を改善することにより、病気の発症・進行を予防するという1次予防を行うことが重要で、各人が主体的に病気予防に取り組むことが望まれます。

 

みなさんの検査成績はいかがですか

 ほとんどの方が毎年人間ドックや健診で検査を受けています。これらの検査では正常の方は非常に少なく、年齢によっても異なりますが、全体の2割程度しかおりません。多くの方がなんらかの項目で異常値をもっています。一人でいくつもの異常をもっている方もいます。よくない生活習慣を続けてから病気が発生するまでは何年もかかります。要医療となった方はもちろん、要経過観察の方もご自分の生活習慣を見直して、何が原因か考えてみましょう。そして不適切な生活習慣が見つかったらぜひご自分で修正してください。

 

ライフスタイル型ウォーキングのすすめ

 運動不足が原因となった方にはウォーキングをすすめています。ウォーキングの場合、「週2-3回、120分以上、速歩をして下さい」と成書にかいてありますが、特別な歩きをする必要はありません。日常生活の中でできるだけ身体を動かし、活動的な生活を送り、1日の総歩数がある程度(11万歩くらい)増えればそれで充分です。多くの方がそれだけで病気を改善しています。日常生活そのものがウォーキングです。さらに、休みの日に楽しいウォーキングのイベントに参加できると申し分ありません。私は、イラストのようなスタイルで参加しています。どこかでお会いできると嬉しいですね。