院生必読
「困ったときの情報検索」





人間科学専攻
原田こずえ


はじめに

大量の情報の中から目的に合った情報を探し出し、評価・整理・加工・発信していくことのできる能力−すなわち「情報リテラシー」がこれからの社会を生きていくための必須の能力といわれています。2003年度からは高校において「情報」科が必修科目となります。私たちは、新しい世代との「デジタルデバイド(情報格差)」が起こらないように自己努力し、「情報リテラシー」を向上させていく必要があります。

情報を探し出して発信していく−これは、私たちが現在進行形で行っている作業ですね。

発信のための「論文作成指導」は先生におまかせするとして、探し出すことについて考えてみましょう。

 

情報を探し出すということ

情報検索とは「あらかじめ蓄積されている情報の中から、必要な情報を探し出すこと」と言えます。この中には2つの機能が言われています。一つは、情報を蓄積する、もう一つは情報を探し出す、ということです。

蓄積された情報が、「整理されていない状態」では効率的な検索ができません。修士論文などのために収集したデータは、上手に蓄積されているでしょうか。紙面の都合上、ここでは「蓄積」について紙面をさくことはせず、「検索」について述べ、具体的な検索のコツを少しだけご紹介します。

蓄積されたファイル(紙媒体も含まれます)の中から必要な情報を探し出すことですが、これには、検索テーマの分析、検索語の選定、検索式の作成、検索の実行、検索結果の評価などのプロセスが含まれるといわれています。

情報検索は、検索する情報内容や期間、手法により種類がわけられますが、ここでは、文献検索(図書、雑誌論文、新聞記事)をオンラインデータベースで検索する場合について紹介しましょう。

 

コンテンツメニューから図書館へ

みなさんは、大学図書館を利用していますか?総合社会情報研究科は通信制大学院なので、大学図書館は遠くて利用できないと、いわれそうですね。でも、ここでいう大学図書館はおなじみの「コンテンツメニュー」から入ることのできる「図書館」のことです。

「コンテンツメニュー」の図書館へ入りましたら、「日本大学蔵書目録検索システム」をクリックしてください。左下の「総合学術情報センターに戻る」をクリックしてください。

図書館の総合情報がみられます。

また、「英文雑誌新聞記事データベース(ProQuest)」をクリックしてください。ProQuestのトップページがでましたら、スクロールして一番下の「日本大学のサービス」をクリックします。雑誌記事索引や、外国語オンラインジャーナルにアクセスできます。

日大だけではなく、いろいろな大学の図書館ホームページをご覧いただくとわかりますが、図書館のホームページは「宝庫」といえます。いろいろな情報へリンクしていますのでぜひご活用下さい。

さて、近年では、多くの図書館がインターネット上でOPAC(Online Public Access Catalog)を公開しています。「コンテンツメニュー」から、図書館に入り、蔵書検索をしてみましょう。

 

検索の実際

たとえば、ある特定の資料を探すときには、どうしますか?書名・著者名・出版社・発行年など事前にわかっている情報が多いほど、確実に探し出すことができますね。参考文献や引用文献として紹介されているものなどは、各項目について入力ミスさえしなければ、所蔵の有る無しを確実に確認できます。

しかし、特定の資料が定まっていない場合はどうしますか。たとえば「生涯学習」について書かれている資料が読みたいとします。「検索に用いる語句」に「生涯学習」といれて検索してください。結果は、何件ヒットしましたか?

次に「生涯」を一段目、二段目の頭は「AND」を選択し、「学習」と入れて下さい。検索結果の違いを確認してください。

最初の検索では、「生涯学習」という一つの言葉(ワンワード)を含んでいる資料を検索しています。後者は「生涯」という言葉と「学習」という言葉の両方を含む資料を検索しています。つまり『生涯を通じての学習』という書名の図書があった場合、後者ではヒットしますが、前者ではヒットしません。

さらに、この分野の場合「生涯教育」という言葉も検索語として取り上げなければ、有効とは言えないかもしれません。

また、対象を「全項目」とすると著者や発行者が「生涯学習課」の場合も含まれます。

 

検索の強い味方−検索演算子

ここで、検索するときに忘れてはならない大事な概念をご紹介しましょう。「検索演算子」です。演算子を使うことによって、単にキーワードを入力するだけよりも、検索結果を拡げたり、絞り込みをすることができます。これは、図書・雑誌・新聞記事等のデータベース検索だけでなく、サーチエンジンを使っての検索ではとても重要なものです。ぜひ活用して下さい。

AND検索 ANDの両側のキーワードを含みます。

OR検索  ORの両側のキーワードのいずれか一方(または両方)を含みます。

NOT検索 NOTの後ろにあるキーワードを含みません。

メニューでは「AND」という表現ではなく、「必ず含む」などで表現される場合もあります。

たとえば、アメリカの経済史についての資料を探す場合、「アメリカAND経済史」だけではなく、「(アメリカOR米国)AND経済史」とすれば、アメリカという用語を使わず、米国という用語だけを使った経済史の資料も含まれます。「合衆国」ということばも必要かもしれませんね。

また、先の例でも使いましたが、時代とともにことばが変化することもありますね。「生涯学習」と「生涯教育」ですとか、「産学連携」と「産学協同」など、片方だけでは有効とは言えません。(もちろんわざと省く場合もあるでしょうが)さらに、表記上のことでは、「林檎」「りんご」「リンゴ」など日本語検索は、本当に難しいです。

日本語検索で難しい点でもう一つ。全文検索データベースの場合(例えば朝日新聞記事データベースDNAなど)、検索語はどこからでも切り出しています。あまり良い例ではないのですが、単純な例としてご紹介します。「京都」と検索語を入れると「東京都」ということばもひっぱってきてしまうのです。このことばの中には、「京都」ということばが含まれていたからです。ですから、「NOT東京都」と入力してノイズを省く作業が必要です。

 

〜お気に入り登録@〜

「検索演算子」が理解できても、肝心の「キーワード」が複数思い浮かばなければ困りますね。ここで自分の「語彙力」が問われてくるのですが、突然、力がつくものではありませんので、お困りの方は、次のURLをお気に入りに登録して下さい。

http://search.kcs.ne.jp

これは「シソーラス辞書検索」です。シソーラスとは元来、「宝庫」を意味するギリシァ語に由来することばです。語句を意味によって分類配列し、各語句についての同義語、類義語、上位語、下位語、反義語などを記述した辞書のことをいいます。

 

院生の必須アイテム「雑誌記事索引」

論文作成の際、欠かせないのが先行研究のチェックですね。院生は「MAGAZINEPLUS」というデータベースが使えるので、ぜひ使いこなしましょう。

MAGAZINEPLUS」は、「雑誌記事索引」(国立国会図書館作成で国内雑誌の文献が幅広く検索できる)ファイルデータに加えて、ジャーナルインデックス、JOINTKSK(海外の産業、企業関係の雑誌)、学会年報、学術論文等のデータを加えた、総合的な雑誌記事のデータベースです。現在の収録データは、雑誌記事索引ファイルの330万件とその他のファイルデータの総計で520万件以上のデータが利用可能です。

昔、冊子体のもので検索していたことを思い出すと、ホントに便利になりました。しかも図書館にいかなければ調べられなかったものが、家のパソコンからできるのですから。(しかし、大学がこの有料データベースの使用契約をしているからこそですよ、今のうちにどんどん利用しましょうね)

検索方法は「MAGAZINEPLUS」画面の右上に[HELP]というボタンがありますから、そこをクリックして参照して下さい。(ちなみに、OPACや各種データベースには[HELP]や[利用案内]があります。著者名入力の場合、姓と名の間にスペースを入れるとか入れないとかの違いがありますので、参照して下さい。)

MAGAZINEPLUS」で検索した結果、論文を手にいれるにはどうしたらよいでしょう。

詳細画面を開くと「誌名等」という項目があります。この誌名を確認して、日大のOPACを検索して所蔵を確認します。

 

〜お気に入り登録A〜

図書や雑誌が、日大に無かった場合、次のURLを利用して下さい。

http://webcat.nii.ac.jp/

これは、「NACSIS webcat」という国立情報学研究所の目録所在情報サービスです。約1600の大学図書館等で所蔵する資料の総合目録データベースですから、ほとんどの場合どこかの機関が所蔵していると思います。

他の機関の資料を利用する場合、ILL(interlibrary loan)という図書館間相互貸借の制度を利用します。図書資料に現物や、論文の複写を取り寄せることもできます。

Webcatでご自宅近くの大学図書館が所蔵していた場合は、所属図書館の紹介状があれば利用することが可能です。また、公共図書館でもインターネット上でOPACを公開しているところがありますので要チェックです!(日大図書館ホームページにもリンク集があります)

 

新聞記事データベース

情報の新しさといえば、テレビは別として、新聞→雑誌→図書の順ですよね。図書や雑誌は、OPACや、webcatMAGAZINEPLUSなどを利用して検索ができます。しかし、国際関係など日々刻々とかわる情勢の把握などについては、新聞も有効な情報源です。昔は、縮刷版を一生懸命探していましたが、今は、データベースが利用できます。残念ながら、日大では使えないようですが、DNADigital News Archives)という朝日新聞記事データベースや日経テレコンなどのオンラインデータベースとCD-ROM版の新聞記事データベースを使い分けることによって迅速に検索を行うことができます。

しかし、インターネット上では、対象期間は限られますが、無料のデータベースが提供されていますので、こちらもご利用下さい。

 

〜お気に入り登録B〜 

http://www.mainichi.co.jp

毎日新聞の過去2年間の主要記事の全文検索

http://nikkei.goo.ne.jp/nkg_top.cgi

日経新聞4紙記事過去1年間の見出しまでの検索

http://www.saga-s.co.jp/pubt/ShinDB/search.html

佐賀新聞1994年以降の記事検索データベース  全国で唯一無料提供

サーチエンジンのこと

与えられた検索語に対してそれに適合するサイトやページをリストアップしてくれるサイトがサーチエンジン(検索エンジン)です。大きく分けて2種類あるといわれています。

サイト検索をしているのが、ディレクトリー型(登録型)サーチエンジンです。Webサイトを大分類、中分類、小分類のように、多数のカテゴリーに分けて登録しています。サイト登録数は数万〜数十万件といわれています。代表的なサイトが「YAHOOJapan」です。

 ページ検索をしているのが、ロボット型(全文検索型)サーチエンジンです。ロボットと呼ばれるプログラムがネット上を巡回し、Webページのテキスト情報を収集してデータベース化しています。ページ登録数は、数百万〜数千万件になります。代表的なサイトが

goo」や「infoseek」です。百科事典でいうと、ディレクトリー型は目次、ロボット型は

索引にたとえられています。ここでは、多くをお伝えできませんが、このように、成り立ちや長所、短所が異なりますので、同じ検索エンジンばかり使うのではなく、必要に応じて使い分けることが効率よく検索するコツです。

 

〜お気に入り登録C〜

http://www.pc.mycom.co.jp/search/

Super Searcher 一度のキーワード入力で、各サーチエンジンの検索が可能。

これを使って、あなたの得意分野を検索してみましょう。各サーチエンジンの検索結果を比較して特徴をつかんで下さい。

 

書店・出版社も重要な情報源

日大図書館ホームページからも書店のホームページへリンクしていますが、Web上で新刊情報をキャッチすることはとても大切です。図書館は限られた予算内で資料を購入しているわけですから、当然、そこからはじかれた情報があるわけです。また、専門書や学術書は、最寄りの書店では手に入りにくく、注文に1回、受け取りに1回と何回も足を運ぶ必要があります。Online Shoppingはその点とても便利。お忙しいあなたにもお勧めします。

出版社のホームページも使えますね。心理学に強い出版社、哲学に強い出版社等々、ご自分のテーマに関連した出版社は要チェックです。

 

外国語データベース使ってますか?

公共図書館でもCD-ROMなどの電子媒体を使える館が増えてきています。でも、外国語データベースを使えるのは、なんといっても大学に所属しているからこそ(もちろん企業図書館でも導入していますが)です。

日大で契約している「Pro Quest」は、BellHowell社が提供するインターネット経由の洋雑誌・新聞情報です。

研究分野によっては、すでに外国語データベースを使っている方も多いことでしょう。

大学図書館では、外国語のデータベースが、どんどん導入されています。Full Textが読めるもの、Abstractだけのものなどいろいろです。

でも、語学に自信のある方ばかりではないですよね。翻訳ソフトは、3〜5万円くらいですか?これを使うと、変な日本語になることもありますが、概略をつかむには、時間の節約になると思います。

 

〜お気に入り登録 おまけ〜

http://www.excite.co.jp/world/

サーチエンジン「excite」で提供されている無料翻訳ソフト。他にもWeb上で提供されています。*データベースによっては使えないものもあります。

http://kotoba.ne.jp

Internet Resources 翻訳のためのインターネットリソース

http://www.gakkai.net/

学会及び学術集会の情報を提供するサイトです。

http://www.kantei.go.jp

首相官邸のホームページです。「官報・白書・統計」や「リンク」などお役立ち情報が探せます。「官公庁リンク」からは、各省庁の審議会情報も見ることができます。これらは従来紙媒体でしか提供できなかった頃に比べ、格段に便利になった分野です。

 

おわりに

お伝えしたい情報がたくさんあって、長々と書いてしまいました。情報を検索していくことは、これからますます大変になっていくでしょう。情報が蓄積されている媒体の範囲が広がっているからです。

自分が、どんな情報を求めているのか、期間はいつ頃のものか、どの程度の範囲が必要なのか等々をはっきりさせることが、効率的な検索を生み出します。

どんな分野のものか分からない場合、とりあえずキーワードをWeb上で検索してみる。そして、それが新しい概念のものであれば、図書ではなく雑誌論文を探してみましょう。

また、電子媒体は、比較的新しい情報しか蓄積されていませんよね。ですから、評価の定まった図書媒体が、不必要になることはありえません。それぞれの特性も考えて、媒体を選びましょう。

ご自分のテーマだけに関心を持つのではなく、いろいろなことに好奇心を持ち続けることが「検索」する際の助けになるとおもいます。

最後に一言。「好奇心は、検索を助ける。」(原田の迷言)