「香港株式市場の見通し」
平成12年度修了生・国際情報 岡野直行
(ご参考)香港経済貿易代表部(日本語)
世界的に株式市場は波乱の様相を呈している。過去数年間で急速にグローバル化した経済は、結果として株式市場の連動色を強めたからだ。香港株式市場も例外ではなくグローバル・シュリンクの渦中にある。
<ハンセン指数のチャート>
http://finance.yahoo.com/q?s=^HSI&d=1y
ところで資産運用の世界で、これまでの分散投資概念を超える新たな選択肢の出現が、株式市場の値動きに大きく影響するようになっている。すなわち伝統的な「株式投資ポートフォリオ」に新たな「オールタナティブ」資産(注1)を組合せる行動である。最近では投資資金の一部が恒常的にshort(売建て)サイドに充てられる傾向がある。
さてファンダメンタルズの検討に移ろう。景気鈍化が続く米国や不良債権処理の進まない日本に代わり、中国が世界経済の牽引役となることが期待されている。当面の輸出鈍化は避けられないが、内需は相当拡大すると見ている。WTO加盟を機に海外からの直接投資は一段と盛り上がるし、北京オリンピックの準備でインフラ整備や施設の建設などが本格化してくる。
最後に具体的な投資戦略である。優良株は海外市場の動向を睨みながら、突っ込み買いの機会を捉え、売方の買戻しに乗じてトレーディングするくらいの気構えで臨みたい。
個別には、中国内需関連企業群から長江インフラ・ストラクチャー(1038)に注目している。
<当社ホームページ>
http://www.cki.com.hk/english/our_business/our_business.htm
当社の事業の特徴はBOT(built operate transfer)方式である。これは、香港・中国で高速道路、発電所などのインフラ工事を請負(built投資・開発)い、完工から20〜30年間にわたって、その施設の利用料を徴収(operate運営)して利益を得る仕組みだ。最後に施設およびその権利を政府に移転(transfer)する。
中国政府にとって当初の建設資金負担が少ないためメリットは大きい。一方、契約期間が超長期にわたるため、コストに対する利用料水準などの見積りにはノウハウが必要であり、競争相手は限られる。株価は相場全体に連れ安定している。このため来期の予想PERは8倍台でここからの下値リスクは限定的だ。
(注1)機関投資家や年金基金は、伝統的な投資資産(株式ポートフォリオ)に代替(オールタナティブ)資産を組合せて有効フロンティアを調整する行動を積極化させている。オールタナティブの種類には、株式タイプ(レバレッジ、マクロヘッジ、Long Short、未上場・ベンチャー投資)の他、不動産、商品(原油、穀物)、デリバティブなどがある。
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