国際情報専攻 佐藤先八郎

中国にとって望ましき米国

「現代版中華思想」

中国の人々から見れば、米国は、物資が豊かで自由な理想の国である。しかし、中国政府の立場から見ると、米国は、覇権主義的で、強大な軍事力と経済力を兼ね備え、いつもアジアで大国として振舞いたい中国のじゃまをし、平気で内政干渉をする、非常に嫌な超大国である。

中国は今、目覚しい経済成長をし続け、かつてないほど豊かな国になりつつある。しかし、中国は、広大な国土、多種の民族からなる13億の国民、ロシア、ベトナム、インド等に連なる長大な国境等を維持しなければならない。また、台湾、チベット、法輪功及び自由化と制度の問題等内外の不安定な要素も少なくない。このようなことから、中国は、このまま経済成長を続けることが絶対に必要であり、仮に経済成長がストップしたならば、中国の影響力はたちどころに低下し、一挙に矛盾が噴出して、政権の維持も困難とならざるを得ない。

従って、中国は、中国市場の広大さ、将来の発展性等を餌に米国と友好関係等を結び、大規模な資本投資と最新技術の移入等に努力する一方、脅威となる極東米軍を引き上げさせ、アジアの覇権をも獲得しようとしている。


米国にとって望ましき中国

「アメリカの楔(くさび)」

米国から見れば、中国は13億の人口を擁し、広大な国土、未開発の市場等魅力的である。その反面、自由化、民主化がやや遅れ、軍事力を毎年増強しつつ、経済発展を続ける大国である。更に、台湾、チベット及び人権問題等、米国の受け入れにくいことも数多くある。

このような要素を考えると、長期的に米国は、中国が米国と同様の自由で、民主的な国家になることを望みつつも、経済を含め、如何なる面においても、米国の脅威になることは許さない。従って、中国の軍事力を背景としたアジア諸国へのプレゼンスの確立、核ミサイルの米国への脅威等に対しては、同盟国、友好国等と図り、断固たる態度を取るとともに、最先端技術の流出も許さない。一方、短期的に米国は、中国をWTOに加盟させ、米国の必要とする消費財、原材料等を輸入する代わりに、大量の米国の農産物、工業製品等を輸出し、国際ルールの下で、知的所有権を含めた米国の利益を追求する。

このように、今の米国は、中国の将来性に対して脅威を感じつつも、広大な市場に魅せられており、今後は、中国の発展状況等と米国のコントロール、さじ加減を勘案しながら、自国の国益を追求する傾向を更に強める。