国際情報専攻 堀内 博

中国にとって望ましき米国

「米国との共生を目指す中国 ―米の一方的外交に懸念―」

本年4月に行った世論調査の結果、個人レベルでの中国人の意識に、米国は「あこがれの国」と映るが、国レベルでは「嫌いな国」が同居している矛盾差が浮き彫りにされた。嫌いな国のきっかけは、89年の天安門事件を米国が非難し、その反動と考えられている。

それまでの中国人は親米派との見方が支配的であったが、その後の両国間の関係は、台湾海峡危機、在ユーゴスラビア中国大使館誤爆、米中軍用機接触事故等一連の不幸な事件により、国レベルでの関係は悪化の一途を辿っていった。

最近、中国は積極的外交を通じて対米関係改善を図る姿勢を鮮明にし、米国大統領の訪中も両国間で討議されていることは、両国が早期に外交改善の期待をもつ現れといえる。

中国は経済発展を進める上で米国の協力を期待するが、ブッシュ政権発足後に目立つ米国の一方的な外交には懸念をもっている。中国は、米国が覇権主義を改め共生でき得るパートナーとなることを求めている。


米国にとって望ましき中国

「中国との協力関係を模索する米国」

米国人が中国人を個人レベルで見る目は、勤勉、エネルギッシュと好意的だ。だが、米国の対中国政策では、人権問題の改善が経済や貿易上の利益を優先していることは明白で、チベット、政治思想犯、法輪功、中国系米国人のスパイ嫌疑による逮捕等で人権抑圧の国のイメージが相変わらず米国民の心に大きなトゲとして残っている。

一方、米国は中国の台頭が気になるが、アジアでの米国のプレゼンスの高まりを嫌っていた中国が、これまでの方針転換とも受け取れる対米関係改善を外交優先課題に掲げ始めたことは歓迎すべき変化と受け止めている。

米国は、中国の人権抑圧問題の改善に加えて、ブッシュ政権が新たに掲げるミサイル防衛構想への理解や台湾問題の緩和であり、冷却化した二国間関係の早期修復を模索している。そのうえで、米国は中国との経済面も含めた新たな協力関係の再構築に動き出し、共にアジア太平洋地域の平和と繁栄に寄与することを願っている。