「マレーシア〜元気を求めて・・〜」






平成12年度修了生・国際情報
斎藤俊之

 修了して早2ヶ月。月日の経つのは本当に早いです。勉強して楽しい、よかったと実感できるのは、学んだ知識や考え方等を持ってしてそのめがねで実社会を覗き、自分なりに考える事が少しでも出来ることではないだろうか。

 世の中は日々、変化する。我々の周りを見ると今年に入って、日本経済は、デフレスパイラルという暗い言葉がさまよっているなかで、流通業界、外食産業そして電話通信業界と「価格戦争」が、誰からの目からみてもわかるように日々繰り広げられている。単なる価格のみの上げ下げではなく、コストを意識し、会社の体質をにも目を向けた構造改革に徹しているその姿は、これまでの商品をとにかく取り揃え、店頭に出せばいいというだけでは成り立たない。これまでとは違う新たな手法や着眼が必要になっていることがヒシヒシと感じられてくる。つまり、可処分所得が低下し、財布の紐が堅く、質とそして価格が一体となって「充足感」をもたらすもので無い限り、国民は目を向けない厳しい生活観が現れているからに他ならない。

 会社も個人もそして住む地域も、これまでの「御上におまかせ」から、苦手な所であるが、自ら世の中の潮流をつかみ、問題点を探しそして、自ら改革に着手しなければ「元気」は決して見えてこない。そんな地点に今、立たされているのではないのかと新年度を迎えふと思った。

 そんな折、私は、リフレッシュを目的に「元気」を求めマレーシア・ペナンへ出かけた。ペナンは4回目。前回来たのは、同専攻科の鈴木佳徳さんと昨年8月末に現地調査で来たからまだ1年も経っていない。しかし、ペナンの町の情景はその時とは一変。目に留まることが多々あった。本報告では、そのことから2.、3述べてみたい。

 

【ショッピングセンター】

 ペナンのショッピングセンターは老舗コムタをはじめここ数年ではミッドランドパーク、アイランドプラザと新しいショッピングセンターが出来ている。さらに、老舗のコムタ(地上60階の高層ビル)の横にメガコムタと称した新たなショッピングセンターがオープンしていた。ちょうど、2年前、私が訪れた時には通貨危機でバブルが崩壊し、地上2階まで、それも中途半端に骨組みが組まれたまま放置され、何ができるのか検討もつかなかった建物である。その建物が、ものの見事にショッピングモールとして姿を変え、スターバックスを玄関口にかまえ新たなショッピングスポットとして動き始めようとしていた。始めようとしていたと進行形で表現したのは、テナントがまだ50%ほどと空きが目だっていたからだ。

 これらショッピングセンターに共通する作りは、数多くの大小の専門店が出店していることである。日用品にはじまり衣料、医薬品、ファーストフードと一日中いても退屈せず、かつ、ここにくればほとんど揃うという便利さである。

 差別化という視点に立つと、コムタとミッドランドパークが庶民的な値段の商品店が揃っているのに対し、アイランドプラザは高級品店が多い。客層を分けていることがわかる。さらに、娯楽施設では、コムタがゲームセンター・カラオケを充実させれば、ミッドランドプラザはボーリング場、アイランドプラザは映画館という作り様だ。

 日本でも最近はショッピングモールと称し、一つの建物・敷地内に多くの専門店舗が入り全体でみると百貨店のような形が多く見られるようになってきている。異業種が集るモールだからこそお客を呼び込むという商店にとって難しい問題を互いの店のネームバリューや評判によって互いに補うという効果がそこに生まれているのではと思った。行政機関の窓口や観光課がこうした人の集るモールの一店舗に入ってくれば、行政に対するイメージも相当変わるのではとふと思った。住民票や届出が買い物と一緒にできる。かつ、町の情報も手に入ればどれだけ便利で時間的コストを軽減できるだろうか。

 

【バスターミナル】

 日本の地方では、駅前から郊外に商業地が移りこれまでの駅前ターミナルの存在意義が変化しつつあることとあわせバスの路線問題が地域課題の一つになっている。つまり、黒字化しない路線を廃止することで庶民、特に高齢者、通学生からはその不便さを訴えられることが多い。人の流れがこれまでの駅前中心から各地へではなく、各地から郊外の商業地へという流れに大きく変化しているその変化にバス路線が呼応していないことからバス離れが起きていることが一つの要因と考えられている。また、一世帯平均約2台という車の普及がバス離れを加速させているといって過言ではない。

 ペナンにきてふと思ったことは,ターミナルがいくつかありそれぞれ異なった役割を果たしていることである。鉄道駅に隣接するターミナルは、ペナン島行きのバスや港湾の工場地帯を走るバスの他、長距離バス(タイ国境やクアラルンプール行など)の出発点でもある。そして、商業地、ショッピングセンターコムタの1階にあるターミナルは、リゾート地域向け、繁華街循環、空港方面などと各地を結ぶ路線が必ずここから出発するかここを経由するというセンター的役割をもっている。

 このバスターミナル。一番の繁華街でシンボル的なコムタの1階に位置するという点が日本の地域にはない発想といっていいのではないだろうか。そして、料金がタクシーの約1/10ということも人々がバスを使う大きな点だ。駐車場の待ち時間や料金を考えると明らかにバスの方が、コスト的に安く便利であるからだ。

 日本では時既に遅いかも知れないが、仮に、商業の中心、人の流れの方向を的確に読み、都市開発を行う際にバスターミナルの弾力的な移転と設置が行われていたのならこれほどまでにバス離れすることもなかったように思えてならない。消費してくれるのを待つのではなく生活者の視点で出きることはないか、町の人の足となるならその本分をきちんと考えることが大切さだとふと思った。

 ペナンでもITブーム。電化製品、パソコンと日本と同じものが陳列されている。テレビにいたっては液晶が堂々と売られていた。しかし、ホテルに滞在して感じることは、電波の感受が良くないことである。また、電圧に斑があるのか時折画面がおかしくなるのをみて、まずは安定した社会インフラをしっかり構築しなくては立派なテレビやパソコンも単なる無用の箱になってしまうと。課題も見受けられた。

 同じ地に何度か来ると、こんなアイデアを取り入れられないだろうか、こんなブームがあるのか、などと一風変わった視点で、その地を見る余裕が生まれる。そんなマレーシア・ペナンの旅であった。帰国前日、立ち寄った店先には栄養サプリメントがたくさん並び、店内のテレビモニターそして雑誌でも健康を啓発する紙面が目に付いた。さらに、ペナン国際空港の係官と笑顔で挨拶を交わすと胸にはスマイルというワッペンをつけ業務に当っていた。そして、そのペナン国際空港の出発ゲートには有料のマッサージチェア−が一列に並んでいた。変化する町並みと現地の人とのコミュニケーションで「元気」をもらったが、帰り際のふとした出来事に元気を出すには「スマイルコミュニケーション」そして「体の健康」これが第一だと強く教えてくれているようであった。