「金持ち父さん貧乏父さん」


ロバート・キヨサキ、シャロン・レクター著/白根美保子訳筑摩書房2000年11月初版発行1,600円)

本書の企図は、まさしく、サブタイトルの「アメリカの金持ちが教えてくれるお金の哲学」を明示することにあります。つまり、金持ちになるためには、どのような考えが必要なのか、を説いているのです。

この結論は、金持ちになるためには、資産(不動産・債権など)を増やすことを第一とし、資産自体が金を作り出すまでは、消費を抑えろ、ということです。具体案としては、いわゆる土地転がしを勧めています。これは、まさしく、バブル全盛期に日本で行われた手法です。本書がアメリカでベストセラーになることはいざ知らず、今の日本においても売れていることについては、本書で著者が言っているとおり、「私は、ベストセラー作家であり、最優秀作家ではない。」という著者のセールス技術にまんまと我々日本人読者が嵌ってしまったからではないでしょうか。

著者は、金持ちになるための6つの教訓を提示しています。その中の一つに「金持ちは、お金を作り出す。」があります。この意味は、通常の人間は、給料などの収入を得ると即座に食費、衣料費、家のローン、家賃などに充てます。金持ちの場合には、収入を費消する前に、不動産や株などの資産形成に充て、その資産から作り出された家賃収入や配当などにより、生計を維持します。当然、家賃収入や配当が出るまでは、娯楽費や遊興費など自分のための支出を抑えなければなりません。このように、金持ちになるためには、強い忍耐力と精神力がなければならないことを強調しています。

映画「マルサの女」の中で、脱税をしているラブホテルの経営者(たぶん山崎努が演じていたと思います。)が、グラスに並々と入っている水割りを前に、金を得るには、グラスにいっぱいになっているからといって、その水割りを飲んでしまうのではなく、表面張力から外れ、滴り落ちたほんの少しを啜らなければならない。と、言っていたことが思い出されました。この考えこそが、金持ちになるための真髄なのではないでしょうか。ただし、マルサの女の中では、このラブホテル経営者は、脱税容疑で起訴されてしまいますが、著者は、一貫して合法的に節税をすることを説いています。

国際情報専攻 亀田 満