「修士論文を終えて」

国際情報専攻 添谷 進

著者紹介:
昭和39年生まれ 36歳
職業:千葉県庁
趣味:合気道、読書
文武両道を目標として大学院に入学しました。
休日の昼間は合気道場、夜は学問、
平日は、もちろん仕事に全力。
とても幸せな時間を過ごしています。


 私が、日本大学大学院総合社会情報研究科を志望したのは、「修士になりたい」これが第一の理由でした。近年増加している夜間や昼夜開講制の大学院も検討しましたが、職業を持ちながら、学習をすることは、時間的、経済的、体力的にも困難を伴うことが予想され、どうしたものかと考えていたのです。その中で、日本大学が通信制の大学院を設置することを知り、「これならば」ということで、早速、願書を取り寄せたのです。

 出願時の研究計画書の段階から、政策形成と世論との関わりについて研究することとして、近藤大博教授にご指導いただくことを希望していました。小論文と面接の入試に無事合格し、2年間の大学院生活が始まったのです。

 この報告では、私の論文テーマ選定の動機と、論文作成にあたっての経験談をご紹介します。

論文テーマについて

 修士論文の題目は、「政策形成と世論」としました。

近年、公共事業への批判や、政治不信といわれる状況の中で、官僚や政治家に対する批判が高まり、政治や行政といったものが、我々国民とかけ離れた存在になってしまっているかのようです。しかしながら、政治・行政の活動は、主権者である国民一人ひとりが参加し、責任を持って意思決定すべきものであるはずです。別の言い方をすれば、私たちが一人ではできないことを、資金(税金)を出し合って、我々の代わりに仕事をさせているところ、それが「役所」であるはずです。

そこで、そもそも役所とは、何をするところなのか、何をするかをどうやって決めるべきなのかということをテーマとして修士論文を書くこととしました。

論文の中では、政策の事例として、千葉県が計画している東京湾の浅瀬「三番瀬」の埋め立て計画について、新聞報道を紹介しながら経過を整理しました。東京湾では、これまで、多くの海岸が埋め立てられ、港湾や工業地帯、住宅地へと姿を変えてきました。その中で、「三番瀬」が注目され、その保全が求められるようになった背景には、高度経済成長期における、量的充足を目指す開発の時代が終わり、環境に代表される質的なものを重視する時代への大きな変化があるといわれます。このような、変革期の中での政策の変遷を追い、政策形成のあるべき姿を示すこと、これが私の研究のテーマだったのです。

論文作成について

 上記の論文テーマについては、近藤教授のご指導のもと、1年次の秋頃までに整理し、方針を固めた上で、1年次の後半は、論文構成の検討と新聞記事の収集を進めてゆきました。この作業にあたっては、概ね月に1回のゼミ会合・討論が大いに役に立ちました。様々な職業分野のメンバーからの質問では、自分に欠けていた視点に気づくことも多く、有意義なものであったと思います。

 2年次に入り、前半は「序論」の執筆にとりかかり、夏ごろまでに、一応の素案ができあがりました。この作業を通じて、自分が何を書きたいのか、どのような手法を用いるのか、そのためにどのような資料がいるのか等々、考えが整理できると同時に、その後の課題が明確になることで、「提出期限に間に合うのか?」と、大いに焦りを感じました。

 序論以降の本格的執筆を開始したのは10月でした。この段階で、近藤教授から、11月末までに「草稿全文」提出という期限をいただき、完成までのスケジュールをつくり、可能な限りそれに沿った進行管理に努めました。この時期からは、夜間と休日の多くを執筆に費やし、気力・体力的にかなり厳しい状況となったのです。そして、一応の草稿提出以降の12月も、最終章での結論の整理や推敲などに予想以上に時間を要し、厳しい状況が続いたのでした。

このように、決して計画的とはいえない状況の中で、近藤教授の叱咤激励のおかげもあって、何とか1月の提出期限に間に合わせることができました。私の場合、時間的に追い込まれないと集中できない性格から、このような状況となったわけですが、賢明な他の院生の皆さんは、より早い時期から計画的な論文作成を進めていたことでしょう。 

全般的感想

通信教育については、放送大学の経験もあったことから、在宅で学習し、リポートを提出することなどに関しては、違和感なく取り組むことができました。ただ、大学院レベルの教科書や文献は難解なものも多く、リポートの提出に際しては、徹夜に近い状況が何日か続きました(これは、前に書いたように、追い込まれないと集中できない自分の性格によるところが大です)。

特に、2年次の後期は、論文の提出期限とリポートの期限が重なり、“とっても大変な”状況に追い込まれたのです。振り返ってみると、「二度とできないナー」と感心してしまうほどです。

 論文を書き終えて、「研究するということ」、「論文を書くということ」について、大いに訓練されたことが大きな収穫であったと思っています(本当は、大学院は訓練済みの人が研究をするところなんでしょうが…)。このたびの論文作成を糧にして、今後、自分なりの研究に取り組み、探求する姿勢を持ちつづけられれば、と考えています。

 最後になりますが、適切なご指導と激励をいただいた近藤教授、リポートを読んでいただいた先生方、そして熱心に議論してくれた近藤ゼミの皆さんに深く感謝申し上げて、この報告を終わらせていただきます。ありがとうございました。