熟年交遊録



国際情報専攻
橋本信彦

著者紹介:

東京の北区にて10代後半までを過ごす。豊富な職業経験がいまの私の自慢、10代後半の不動産屋での仕事では、別荘地モドキを売りまくった。 20代前半の目立ったところでは、着物の模様士、これは正しい仕事で、なまいきにも個展などを開く。30代からは建築職人、腕は悪くない。数 年前に階段から落ちる。打ちどころが悪かったのか猛烈な読書人となり知識の空白を埋める。いまは自己の限りのない知的能力に不安を覚えてい る。

 松も取れ、正月気分も薄らいできた1月半ば、ヤッチャンがやってきた。重そうなバッグを抱えている。ぼくのいやな予感は、そのバックを見た瞬間から始まったのだ。我が家では、ぼくの唯一の友人である彼がやって来ると、とたんにそれぞれがそれぞれの範囲内で身構える。その理由を話すと長くなるので控えるが、カミさんは目を吊り上げ、娘は部屋に閉じこもり、飼い犬は唸り、近所の子供は先を争って家に帰り、黒カラスは隣の雑木林へ逃げ出す。(ちょっと大袈裟だけど)

「えーとさぁ、このあいだ話したパソコン、これ」と彼の仕事場に来ているバイトの学生から巻き上げた(いただいた) パソコンを取り出した。

「なんかさぁ、一応使えるって言ってたぞ、高かったんだって」・・・・初めてみる機械でありましたね、ぼくには。

 見た瞬間その機械の古さがわかり、メールのやり取りどころか動かすこともままならないと理解できた。いったいどのように話したら納得するだろうか。わずかな時間の流れの中、ぼくは脳みそのCPUを最大限に働かす。

「こりゃあ、無理だな。あのね、これってコマンドを打ち込んでやらないとソフトが動かないんだ。それに、この機械で動かすソフトなんてオレ持ってないよ」とぼくは優しく彼に語りかける。

「・・・・・・よくわかんないけど、それ買いに行こう。いま行こう。すぐ行こう」

ヤッチャンは、なにがなんでもこの機械を動かしたいらしく、すぐ買いに行こうとぼくを急かす。

 ぼくは覚悟を決めた。ここはひとつ、じっくりと説明するしかないだろうと。半日近い時間の中、ぼくは知っている範囲内で、日本のパソコンのだいたいの流れと、今日のパソコンがどのような進展をとげているかということを説明した。そのうえで、君の持ってきたパソコンは使い物にならないんだよと最後通告をした。

ヤッチャンは片方の(性格には向かって左側)眉を吊り上げ

「ヤロー、オレに、まがいもんをヨコシタわけだ」

「いや、あのね、ちがうんだよ」ぼくは必死に説明した。

「この機械は立派に使えるんだ。けど、今では操作がめんどくさいうえにソフトがもう無いんだ」と。あるかもしれないけどめんどくさくなるんで無いと言い切った。

「ソフトってなんだ」

「・・・・・・・・・・・・・」ガーーン、つ、ついに恐れていたことがやってきましたね。さて、ぼくはこの後、ぼくの持つ、あらゆる知識を総動員してソフトが何であるかを説明する努力をしたわけだけど・・・・・・・・・

以下次号