「論語に親しむ 〜生き方の基本、ここにあり〜」


今泉正顕著PHP文庫2001年発行533円)

 書店には多くの「論語」や「孔子」に関する書物が並べられている。

大抵は経営者や社員教育向きの書物としてビジネス書の棚に置かれている場合が多く、それをとって読もうとする人は限られているように思える。

聖人は近寄りがたい存在かもしれない。

我々の成長過程で何らかの形で触れてきており、それが孔子と知らずに日常に生かされているにもかかわらず。

そのような中で、若い世代に論語をわかりやすく教えてくれる本が出版された。

著者は「戦後なおざりにされてきた“人間愛”“社会規範”につながる価値観を教えてくれる『論語』は21世紀の日本人の生き方を示している。若い世代にも親しんで読んでもらえるようにまとめた。」と話している。

本書は『論語』に親しみを増すための予備知識を解説した序章に始まり、10章に分けて、「良い友を選べ」「言葉は人なり」「生涯『学ぶ心』を持て」「志した『道』は貫け」「どうしたら人は動くか」、そして五つの徳目「仁」「義」「礼」「知」「信」それぞれをテーマに99の論語を取り上げ、その解説をしている。

漢文のイメージをまったく払拭した平易な言葉で、それぞれの内容に関連した幅広い事例を取り入れた解説は一層興味を増す。

附章の「日常よく使われる人生訓」10篇を読むと、『論語』が我々の生活に深く入り込んでいることをあらためて感じる。

著者は「孔子を聖人君子にしないほうがいい」と書いているが、近寄りがたい『論語』を身近な存在に出来る入門書とも言える一冊である。

著者の今泉正顕氏は郡山市在住の経済人であり、自他ともに認める地元の文化活動のリーダー的存在である。趣味の一つが本を出版することで、これまでに12冊の本を世に出している。一昨年初夏に「秋にはモラル・ハザード(倫理喪失)とされている時代だけに、『今こそ論語を学ぶとき』を出す予定で原稿を書いている」と語っていた13冊目の出版が本書である。

国際情報専攻 三浦 悟