「アスリートのメンタルトレーニングって何?」
人間科学専攻 金井泉寿 著者紹介: 和光市在住、短身赴任、47歳 |
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実は、4人の選手(被験者:ハンドボール2名、自転車競技1名、陸上中距離1名、平均年齢24.5歳)に100mを1分に1回ずつ15回走ってもらいました。なんとAさんは3回目に10秒を切っています。でもその後はちょっと...。Dさんは後半に記録が短縮しています。なんということでしょう。本当ならスーパーマン、でもこれは、頭の中のイメージで走ってもらったものです。この図から何がいえるでしょうか。今回は大まかな実験で脈拍、脳波、GSR(皮膚電気反射)などは測定していませんが、全体的に右上がり、つまり選手たちは走る回数が増えるに従い、走時間は遅くなっています。実際にこのインターバルで走った場合には、次第に遅くなり15本も走ればへとへとになることは容易に理解できますから、イメージだけで走っても脳は実際に走ったと同じように感じているのかもしれません。選手の内省報告を聞きますと、やはり、疲れてきたとのことです。また、先述のD君は、後半走っている場所のイメージを直線からトラックに変え、周回するために直線と曲線交互になったとのことでした。これは8回目以降速い遅いの記録が交互に現れていることに符合しています。実験は簡単ですからみなさんもトライしてみてください。
さてアスリートのメンタルトレーニングに関する心理学的研究は、1920年頃からドイツで始まり、1950年頃からアメリカに中心が移り、1965年にはスポーツ心理学のローマ会議が実現しています。現在ではオリンピック等のトップアスリートには欠かせないものとなっています。その領域はというと1978年に研究論文の内容による分類をグローブスが試みています。それによると不安、攻撃性、態度と行動、競争、凝集性、注意の集中、情緒、動機付け、運動指導、成就・成績、パーソナリティ、心理測定、事態変数・環境条件、技術の社会・心理的ステータス、紋切り型反応の15区分となっています。また、どのようなトレーニングがあるかというと、メンタルマネジメント・マニュアルという本の章立ては情動のコントロール技術、注意集中の技術、ストレスのコントロール技術、イメージトレーニング、やる気を高めるトレーニング、積極的思考、目標設定技術、自律訓練法、チームプレーの認知的技術、リーダーシップの技術、コミュニケーションスキルとなっております。こういった内容が競技力を高めるために各競技の特性に応じて適用されています。
以上がメンタルトレーニングの輪郭ですが、ご参考になれば幸甚です。
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