「福祉社会の改革」

人間科学専攻 石井征雄

著者紹介:
私は先の戦争盛んなとき中国大陸で生をうけました。 北京のほぼ中央でした。 父が民間航空で外国勤務で各地を転々としました関係で, 従って兄弟はみな外地生まれです。 私は,いま夢中でやっているものがあります。 それは,福祉の仕事で,障害児(者)の生活圏をひろげることです。 障害児を大事に育てることは,教育や福祉の大切さや, 高齢社会の下支えをする経済社会の大改革になると思い, 血がわき肉踊るのです。

 10年程以前のこと、カナダを訪ねた折りに、たまたま500名規模の福祉施設の閉鎖と出交しました。国際障害者年以前から世界の各国で、大規模な入居型の生活施設が廃止されてきました。スカンジナビアの諸国が、そしてイギリス、アメリカにおいても相次いで施設が否定されつづけてきました。福祉とは言え、施設内で暮らす弱い立場の人たちの不自由さに市民の同情と意識が集まり、利用者、すなわち入居者に主体性が認められてゆくなかで、ひとりわが国だけが、国際社会に取り残されんとした行動年あたりから、基礎構造、社会改革しなければならなくなっていました。与えられる福祉から、当事者の選択と決定を尊重できる状況ができました。斯界の有識者の知恵が集められ、今年から介護保険制度がスタートをきり、サービスが質・量とも足りないことがわかりました。介護保険が制度としてふさわしいのか、従来からの措置制度(行政処分)の部分的な存続が望ましいのか、業界でも賛否・両論ありと言ったところです。お役所からすれば、地域福祉に切り換え、安上がりにできれば好ましいに決まってるのですが…。

 さて、私事ではありますが、大学を出て四半世紀以上、通信教育で各種のことがらを学びましたが飽きたらず、仕事の集大成として子どものこと、福祉の分野で取り残されてきたことを学術的に追ってみたいと単純に思ったのです。おこがましくも自閉症の謎、とりわけ行動特徴についてのメカニズムを掴みたいと考えて、チャレンジしました。はたして、人間を対象にして自閉症の文献を探して関わってみますと、情報は膨大な量で、奥行きがやたらありすぎます。ところが、ヒトの関連領域に文献を探しますと限られています。幸いなことに、湘南キャンパスの生物資源科学部心理学研究室に出入りを許されて、鳥をはじめとする動物を、基礎研究を具にできます。アカデミックな雰囲気に一時とはいえ身をおいてみますと、学ぶことに意欲がわいてきます。この1年間を振り返ってみれば、メディアスクーリングの内容もあり充実していました。e−mailがどうにか使えるかくらいだったのが、今では、職場の事業内容を公開すべくホームページをつくるところにまできました。その上、臨床現場で通用する若干の専門的知識や技術を修得する機会が与えられたことの喜びは大きく、一石二鳥・三鳥の感があります。先日、ディスカッション・ルームからお誘いをえて「Ich-Valley」創立記念事業に参加しました。ゴローバルビジネス研究科の講義を受け、パーティーにも加わってみて、社会人大学院のコミュニティの必要性を感じました。なかには、ウェルネス、ヘルスとかの関連職業の人、近接領域の専攻のひとがあったりします。小生が現在関わっている事業経営の立場からは、福祉ビジネスの新たな展開にヒントをえられます。その上、自分のなかに興味と関心が広がりつつあったところにつながっていることを意識しました。ともかく、先駆的に、開拓的に時代の先読みができるくらいにグローバルな視点をもたねばと考える今日この頃ではあります。