「ミネベアのグローバル戦略」


五十嵐 雅郎著あしざき書房発行/総合労働研究所発売2000年発行2,400円+税)

 私が始めて株の取引を始めたのは、NTTの株が売り出される 前年でした。バブルの始まりです。猫も杓子もは大げさですが、 いっぱしの男が株もいじれないんじゃあ情けねえ、という環境に 私はつかっていました。
 ミネベアの海外戦略がマスコミ等で取り上げられ始めたのが この時期です。高橋氏の日本人ばなれした風貌と、軽井沢に て、海外の要人を招いておこなわれるれるパーティーの報道をみ ながら、単純な私は「ミネベアの株はあがるな、うん」と膝を叩い たのです。
  本書は、愛のムチとして、そんな単純な思考で利益を得た私を、 スリッパで頭の後ろをボカンと叩きました。読む進むうちに何度も です、企業のおかれている環境の変化を捉える努力、企業経営 のコンセプトの重要さ、国をこえての人材登用、すべて多大な努 力のうえでの評価が根底にあり、株価の一要因となるのです。
 もちろんミネベアとて、すべてが順調であったわけではありませ ん。いくつかの事業からの撤退もあります。本書では経営戦略を ベースに、そのあたりの経過を詳細に記述されています。事例研 究の素材としては、ポリシーケースを含む範囲まで網羅してしいる 最良の書と考えます。
 終章にある資料編では、高橋社長のハーバードビジネススクール での講演記録が載せられています。経営者、経営幹部、あるいは これから企業経営を目指す方、必読です。
 読了後、私の後頭部はスリッパによる攻撃でだいぶ薄くなってし まいました。しかしこれは本書の責任だけではありません。

国際情報専攻 橋本信彦