香港株式市場の見通し

国際情報専攻 岡野直行

著者紹介:

  外資系投資信託でマーケティングを担当しています。
本大学院では、「確定拠出年金分野における投資信託の役割」に
ついて研究しています。皆さんのご意見も聞かせて下さい。
趣味はヨットです。クルージングやレースを楽しんでいます。
クルー募集中ですのでご興味のある方は、連絡下さい。

<はじめに>

本稿は「オール投資」(東洋経済新報社)という雑誌に毎月連載しているものに少し手を加えたものです。香港の株式市場を取り巻く環境や主要企業についてご紹介できればと思っております。連載して参りますのでお付き合いください。

 

<本文>

 この秋の株式市場は、夏場に続けていた持合いを下放れ、厳しい調整局面にある。米国株式市場が不安定なことや原油高など外部要因が悪化しているためだ。

(ハンセン指数のチャート)

http://finance.yahoo.com/q?s=^HSI&d=1y

 

相場の不振と対照的に、実体経済は着実に上向いている。まず、中国経済が好調を持続していることだ。アジア域内向けの輸出に牽引され、上半期の鉱工業生産は前年同期比2桁の伸びで、3年ぶりの高水準を示した。また米中関係の安定化を背景にWTO加盟後を睨んだ投資も活発に行われている。来日した朱首相は、今後の政策の中心が「経済構造の改革」であることを示した。

 次に、中国に刺激されて香港域内の景気も上向いてきている。小売り売上高は前年比2桁ペースで伸びている。また9月の住宅用地の競売では事前の予想を上回る価格で落札された。開発業者が住宅市場の先行きを楽観視している証拠である。

こうした好環境にあって米国で景気鈍化による金利低下期待が高まってきた。香港ドルと米ドルとは固定為替制を採用しているため、香港経済の動向と無関係に金利は米国に連動する。景気回復下の金利低下は相場に好影響を与える。

 

 一方で懸念材料もある。香港では時価総額に占める情報通信関連の比重が高く、現在の国際的な株式市況の影響で上下動を増幅させてしまうことだ。従って世界的に情報通信関連が冴えないなかでは、域内地盤の優良株へと投資対象を代えていきたい。

 個別では、スワイヤ・パシフィックに注目している。当社は英系の老舗コングロマリットで、中国とは良好な関係を築いている。事業は多岐にわたっているが、柱の1つは香港での不動産事業(貸ビル・住宅開発)だ。最近の株価は45.8香港ドル近辺で2001年のEPSで計算した予想PER10.6倍。ここのところの下げでPBR1倍を割ってきた。この水準では自社株買いも期待出来る。

(スワイヤ社のホームページ:日本には江戸時代末期に進出している)

http://www.swire.com/

 

<用語解説>

@ハンセン指数:香港株式市場を代表する33銘柄からなる時価総額ウエイトの指数で、香港株式市場全体の時価総額の約7割をカバーしている。

A香港ドル:発券銀行は民間銀行3行。7.8香港ドル発行する毎に1米ドルを当局に預託し米ドルを裏づけとする仕組み。金利の変化が為替の変動を防御する。

B時価総額:会社の値段。発行済み株数×株価。

CEPSearnings per shareの略。1株(主)当りの利益。

DPERprice to earning ratio の略。株価÷EPS。株価と株主利益の関係。つまり、その株価(で買うと)は何年(間の利益)で回収できるかということ。もっとも大事な指標。

EPBRprice to book value ratioの略。1株(主)あたりの純資産。

F自社株買い:自社の株価が安ければ、自分で買入いれて資本を償却する。発行済み株数が減るからEPSは高まる。そうするとPERも下がる。代表的な株主還元策。